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超伝導理工学研究センター

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学術的背景

強相関電子系の超伝導の研究の展開

堀田_補正

研究センター長 堀田 貴嗣
首都大学東京 理学研究科 教授

従来型の超伝導は,格子振動によって媒介される電子間有効引力相互作用によって,上向きスピンと下向きスピンの電子がs波のクーパー対を形成することによって生じることが知られています。電子間のクーロン斥力の影響が心配になりますが,基本的に,同じ時に同じ場所に電子がいなければ,クーロン斥力はそれほど強くは効きません。格子振動はゆっくりしているので,クーロン相互作用とは時間スケールが大きく異なり,対を形成する電子間にはそれほど強い斥力ははたらかず,結局,弱い引力相互作用で超伝導が起こります。

しかし,1970年代のおわりに,CeCu2Si2という物質で,電子の有効質量が非常に大きくなった「重い電子」がクーパー対を形成する超伝導現象が見つかり,電子相関が強い系でも超伝導が起こることが次第に明らかになってきました。そして,1986年に銅酸化物超伝導体が発見され,電子相関が強い系における非従来型「高温」超伝導への期待が一気に高まりました。これまで,磁性と超伝導は相容れないものと考えられていましたが,電子が避け合いながら対を形成する非従来型超伝導では,磁気的な揺らぎが対形成引力の原因となっていると考えられています。さらに最近では,ウラン化合物において,強磁性と共存する超伝導も見つかっており,磁性と超伝導は相容れないどころか,むしろ大変仲が良い場合もあると考えられており,超伝導現象はますます多彩で豊かなものになっています。

このような非従来型超伝導は,有機化合物のp電子系,遷移金属化合物のd電子系,希土類・アクチノイド化合物のf電子系において共通に現れることが多く,大変注目を集めています。これらの物質は「強相関電子系」と総称され,新奇な電子秩序状態の発現やその近傍の超伝導の研究が世界的に隆盛を極めています。それは,新たな量子臨界現象の発見と理解という基礎研究の興味はもちろん,新規物質を開発し,その物性を明らかにしつつ新機能の発現を探索するという現代の物質科学研究のトレンドとも合致しているためであり,強相関電子系は,基礎から応用研究までを含む一大研究分野の源となっています。